高齢者は賃貸物件に入居できない?70歳以上でも入居審査に通る方法をプロが徹底解説
この記事のポイント
- 高齢者の賃貸探しには「70歳の壁」という厳しい現実が存在する
- オーナーが敬遠する理由は主に「収入の低下」と「孤独死による事故物件化リスク」の2つ
- 「子供名義での契約」「外部見守りサービスの提示」「家族の訪問予定」で審査通過率は劇的に上がる
日本の高齢化が急速に進む中、不動産業界や住宅市場においてもシニア世代の皆さまの住まいに関する問題が大きな注目を集めています。
読者の皆さまの中にも、「親が70歳を迎えて住み替えを検討しているが、本当に賃貸物件を借りられるのだろうか」「高齢になると審査が一気に厳しくなるという噂を耳にして不安だ」という方が増えているのではないでしょうか。
結論から申し上げますと、一般的な賃貸物件において、高齢者の方は現役世代に比べて入居審査に通りづらいというのが現在の不動産市場のリアルな実情です。
しかし、なぜ審査が厳しくなるのかという「貸し手側の心理と理由」を正しく理解し、適切な対策を講じることで、70歳以上であっても入居審査を通過することは十分に可能です。
今回は、不動産業界に携わって20年目となる専門的な視点から、高齢者の住宅事情の現実と、入居審査を突破するための具体的なアプローチについて詳しく解説します。ご家族の引越しや、これからのシニアライフの住まい探しにお役立てください。

1 高齢者が賃貸物件を借りにくくなる「70歳の壁」とその現実
まず、賃貸市場において具体的に何歳から部屋探しや審査が難しくなるのかという点について見ていきましょう。
不動産業界における一つの明確なボーダーラインとして、「70歳」という壁が存在します。
もちろん、60代であれば100%誰でも簡単に審査に通るというわけではありませんが、70歳を超えると市場の対応は大きく変化します。
大手の管理会社や個人の物件オーナーの中には、「トラブルやリスクを未然に防ぐため、70歳以上の方の新規入居は定款やお部屋の貸出基準でお断りしている」と明確な自主ルールを設けているケースも少なくありません。
⚠️ 本人契約だけではない!緊急連絡先の落とし穴
この年齢の壁は「入居者本人」として部屋を借りる時だけに留まらないのが厄介なところです。例えば、現役世代の子供(息子さんや娘さん)が自分自身の賃貸物件を契約する際、緊急連絡先の登録が必要になります。この万が一の連絡先として70代の親を登録しようとしたところ、「70歳以上の方は緊急連絡先として認められません」と管理会社から断られてしまうケースもあるのです。このように、70代を迎えると不動産契約におけるハードルが全般的に高くなるのが現在の実態です。
2 不動産会社やオーナーが高齢者の入居を敬遠する「2つの大きな理由」

なぜ、これほどまでに高齢者の入居審査は厳しく設定されているのでしょうか。
差別的に断っているわけではなく、物件を貸し出すオーナーや管理会社が懸念する、きわめて現実的なリスクが2つあります。
相手の懸念点を先回りして知ることが、対策への第一歩となります。
理由①:定年退職に伴う「収入の低下」と支払い能力への不安
1つ目の理由は、毎月の家賃の支払い能力に直結する「収入」の問題です。
70代になると多くの方が定年退職を迎えており、主な収入源が年金受給や、シルバー人材センター等での限られた就労によるものへと移行しています。そのため、現役時代に企業から得ていた毎月の安定した給与やボーナスと比較すると、世帯全体の収入額が下がっているケースがほとんどです。
一般的な賃貸審査では、入居者の年齢に関わらず、「家賃の3倍以上の月収(またはそれに準ずる収入)」があることが一つの合格基準とされています。そのため、収入の絶対額が下がっている高齢者の方は、この機械的な基準をクリアできずに審査の初期段階で弾かれてしまう可能性が高くなるのです。
理由②:室内での「孤独死」とそれに伴う「事故物件化」への恐怖
オーナー側が最も恐れているのが、入居者が室内で誰にも気づかれずに亡くなってしまうことによる「事故物件化のリスク」です。特に高齢の単身者の場合、万が一室内で体調を崩した際に周囲が気づけず、発見が大幅に遅れてしまうのではないかという懸念が常に付きまといます。
知っておきたい「事故物件ガイドライン」の基本
実は2021年、国土交通省によって「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」が策定されました。これにより、「居室内で自然死(病死や老衰など)があっただけでは、原則として次の入居者に告知する義務はない」と明確に定められました。ただ室内で亡くなったという事実だけであれば、いわゆる「事故物件」としての扱いにはならなくなったのです。
しかし、オーナー側の不安がこれで完全に消え去ったわけではありません。
ガイドラインには重要な例外があり、発見が遅れて遺体が腐敗してしまったり、特殊清掃や大幅なリフォームが必要になったりした部屋に関しては、現在も次の入居者への告知義務が残ります。
孤独死の発生によって物件の資産価値が一時的に下がること、そして多額の原状回復費用が発生することを恐れるあまり、オーナー側は依然として高齢者の1人入居を非常に嫌がる傾向が根強く残っています。
3 70歳以上でも賃貸の入居審査に通るための「3つの具体的アプローチ」

高齢者の入居には厳しい現実がありますが、諦める必要はまったくありません。
オーナーや管理会社が何に対して不安を抱いているのかが分かれば、それを取り除くための「安心材料」をこちらから提示すれば良いのです。実務において特に効果の高い3つのアプローチをご紹介します。
1. 働いている子供世代の親族に「契約名義人」になってもらう
収入面での不安を100%解消する最も確実な方法は、現役で働いていて安定した収入がある息子さんや娘さんなど、ご親族の方に代わりに契約者(名義人)になってもらう方法です。
- 具体的なメリット:現役世代の子供の年収をベースにして審査が行われるため、年金生活による収入面のハンデを完全にカバーし、審査に落とされる確率を劇的に減らすことができます。
- 実務上の注意点:管理会社や物件によっては、「契約者(名義人)と実際にその部屋に住む人が異なる契約(第三者賃貸)」自体を認めないケースもあります。そのため、物件探しの初期段階から必ず不動産会社の担当者に「高齢の親が住むための部屋を、現役の子供名義で借りたい」と正直に相談し、対応可能な物件をピックアップしてもらうのが鉄則です。
2. 孤立を防ぐ外部サービス(在宅介護や訪問見守り)を具体的にアピールする
オーナーが最も恐れている「孤独死による発見の遅れ」を防ぐため、すでに生活の中に外部の目が組み込まれていることを入居申し込み時にしっかりアピールしましょう。客観的な見守り体制が整っていることを証明できれば、貸し手側の心理的ハードルは一気に下がります。
- 現在、週に数回の在宅介護サービスやヘルパーさんの訪問、訪問看護などを利用している場合は、その具体的なスケジュールを必ず審査書類や管理会社への特記事項として伝えてください。
- お迎えの送迎があるようなデイサービスを定期的に利用している場合も、「外部との接触が頻繁にあり、万が一の際にも翌日には必ず気づいてもらえる環境である」という強力なプラス評価に繋がります。
3. 親族による定期的な「訪問予定」を文字にして申し込み時に添える
現在は介護サービスなどを必要としていない健康なシニアの方であっても、ご家族のサポート体制を具体的に言葉にして説明できれば、審査の通過率は格段に上がります。
- 「息子夫婦が車で15分の近所に住んでおり、週末は必ず買い出しを兼ねて様子を見に行く予定である」
- 「娘の勤務先からの帰り道にこの物件の最寄り駅があるため、週に2〜3回は夕食を一緒に摂るために立ち寄ることになっている」
このように、「万が一の事態が起きても、すぐに誰かが気づいて駆けつけられる距離に家族がいる」という具体的な生活実態を書き添えるだけで、オーナーの恐怖心は劇的に解消されます。大切なのは、自分の大切な資産を他人に貸す側の立場を想像し、どうすれば安心して鍵を渡せるかを考えて情報を提供することです。
4 一般賃貸以外の選択肢:資金や資産に余裕がある場合の老後の住まい方

ここまで一般的な賃貸マンションやアパートを借りるためのお話をしてきましたが、もしこれまでの人生で蓄えてきた老後資金や、売却可能な資産に余裕がある場合は、無理に一般の賃貸物件の審査に挑戦し続ける必要はありません。
視野を広げて別の選択肢を検討するのも、賢いシニアの住み替え戦略です。
例えば、それまで長年住んできたファミリー向けの持ち家や分譲タワーマンションなどを売却し、その売却益を元手にして「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」や「シニア向け分譲マンション」へ住み替えるケースです。
こうしたシニア向け専用住宅であれば、安否確認サービス等によるサポートが標準で付帯しているため、年齢を理由に入居を断られるようなストレスは一切ありません。
また、新しくコンパクトな住宅を「購入」するという道もあります。
高齢になってから住宅ローンを組むのは銀行の審査上非常に難しいですが、現金一括で購入するケースにおいては、売主が買い手の年齢を理由に売却を拒否することはまずありません。
ご自身の健康状態や資産状況を総合的に考慮しながら、最もストレスがなく安心できる住まいの形を選ぶことが大切です。
まとめ:相手を安心させる材料を提示して、これからの理想の住まいを見つけましょう

これからの日本の人口動態を見ても、シニア世代の割合は増え続ける一方です。
「高齢だから」という理由だけで一律にお断りしていては、これからの賃貸経営や空室対策は成り立たなくなる時代がすぐそこまで来ています。
今後は、高齢者の方を温かく迎え入れるための新しい賃貸の仕組みや、見守りテクノロジーを導入した物件がより普及していくと考えられます。
しかし現時点においては、まだ古い慣習や孤独死への恐怖から、70歳を超えると審査の目が厳しくなるのが不動産市場のシビアな現状です。
だからこそ、以下の3つのポイントをしっかり意識して、賢くお部屋探しを進めていきましょう。
- 子供世代による名義変更(代理契約)を検討し、収入面での審査を確実にクリアする
- ヘルパーの訪問やデイサービスなど、孤独死を防ぐための具体的な「外部の目」を隠さずアピールする
- ご家族が近隣に住んでいることや訪問頻度など、物件オーナーを精神的に安心させる一言を申し込み時に必ず添える
KRS株式会社では、これまで培ってきた経営管理や不動産実務の知見を活かし、シニア世代の皆さまやそのご家族が、これからのセカンドライフを安心して笑顔で過ごせるための住まい探しを全力でサポートしております。
「年齢のことで断られてしまった」「何から手を付ければいいか分からない」といった不安や小さなお悩みでも、どうぞお気軽に私たちにご相談ください。皆さまの想いに寄り添い、最適な解決策を一緒に見つけ出します。











